1 自治医科大学医学部 生化学講座 病態生化学部門2 自治医科大学 遺伝子治療研究センター3 京都府立医科大学大学院 医学研究科 循環器内科学4 東京大学大学院 理学系研究科 生物科学専攻改変型 AsCas12f によるプロテイン C 欠損マウスのノックインゲノム編集治療〇冨樫 朋貴 1 Khishigjargal Batjargal1 柏倉 裕志 1,2 Nemekhbayar Baatartsogt 1,2 土田 晃輔 1 佐藤 孝弘 1 早川 盛禎 1,2 星野 温 3 濡木 理 4 大森 司 1,2目 的プロテイン C (PC) は肝臓で産生される抗凝固因子である。血中では前駆体として循環し、血栓形成部位で活性化されると、活性化した凝固第 V因子および第 VIII因子を分解し、凝固反応を抑制する。PC遺伝子の両アレル異常は、新生児期に致死的な血栓症を引き起こす難治性疾患である。我々は、小型かつ高活性な改変型 AsCas12fを開発し (Cell. 186: 4920-4935, 2023)、単一のアデノ随伴ウイルス (AAV) ベクターによるノックインゲノム編集を可能にした。本研究では、改変型 AsCas12fを用いたノックインゲノム編集治療により、致死的な PC欠損マウスを治癒できるかを検証した。方 法効率よくPCを発現させるため、肝臓で遺伝子発現が活発なアルブミン遺伝子座 (Alb) を標的とした。非相同末端結合を介して PC遺伝子をノックインするため、Alb イントロン 13 にガイド RNAを設計した。改変型 AsCas12fとガイド RNA、PCドナー配列を単一 AAVベクターに搭載した。ドナー配列には野生型 PCと、我々が開発した活性型 PC (ATVB. 44: 2616-2627, 2024) を用いた。これらの単一 AAVベクターを PC欠損マウスに 1.0 × 1011 vg/マウスで投与し、治療効果を比較した。結 果未治療の PC欠損マウスは 1 週間以内に血栓症により死亡したが、ノックインゲノム編集治療により、致死的な血栓症を回避し、長期生存が得られた。生存率は、野生型 PCをノックインした群で 33.3%、活性型 PCをノックインした群で 57.1%であり、活性型 PCの発現により良好な治療効果が認められた。考 察改変型 AsCas12fを用いた単一 AAVベクターによるノックイン治療で活性型 PCを発現させ、PC欠損マウスの表現型を改善した。本手法は、ゲノムに直接アプローチするため、肝増殖が活発な新生児期に治療効果を維持できる。PC欠損症に対する唯一の根治療法である生体肝移植に代わる、新たな治療法として期待される。 50P 020
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