1 熊本大学 発生医学研究所 細胞医学分野2 熊本大学大学院 生命科学研究部 眼科学講座3 熊本大学大学院 生命科学研究部 薬学生化学分野自然免疫記憶におけるマクロファージのメバロン酸代謝経路の意義〇洪 性賢 1 古賀 友紹 1 船蔵 直史 1,2 稲住 知明 3 杉本 幸彦 3 中尾 光善 1目 的自然免疫記憶はマクロファージ等の自然免疫細胞が炎症を記憶し、次の炎症に対する応答を変化させる現象であり、増強応答 (trained) と減弱応答 (tolerant) に分類される。自然免疫記憶はこれまでに、感染症やがん、ワクチンの効果増強など、様々な生命現象に関わることが明らかになっているが、その獲得・維持における分子機構、特に細胞内代謝の役割については、多くが不明である。本研究の目的は、マクロファージにおける自然免疫記憶の分子機構を明らかにすることである。方 法本研究では、マウス骨髄由来マクロファージを用いてリポ多糖 (LPS) に対する自然免疫記憶モデルを用いた。初めに、LPS刺激後の記憶時間を変えて、RNA-seq解析を行った。次に ATAC-seqを用いて、記憶遺伝子のエピジェネティックな変化を解析した。さらに、代謝遺伝子群の変化に伴う代謝変動を LC-MSを用いて解析し、分子メカニズムの解明に定量的 RT-PCRを用いた。結 果LPS刺激後の記憶時間を変化させた RNA-seqの統合解析から、持続的な記憶遺伝子を同定した。また、ATAC-seqの解析結果から、持続的な記憶遺伝子の内、約 40%がエピジェネティックな変化を伴うことが分かった。次に、記憶を構築・維持する分子機構の解明を試みた結果、LPS刺激によりメバロン酸・コレステロール代謝関連遺伝子群が発現抑制され、細胞内メバロン酸の量が低下することが分かった。さらに各種阻害剤を用いた結果、メバロン酸代謝経路が記憶遺伝子の増強・減弱応答の両方を制御することが分かった。考 察記憶遺伝子には、貪食、遊走、サイトカイン関連遺伝子が含まれ、これらの機能がリプログラミングされることが示唆された。また自然免疫記憶の構築・維持の分子機序として、エピゲノム変動とメバロン酸代謝変動が関わることを示唆した。 38P 008
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