1 東京大学 医科学研究所 老化再生生物学分野 2 千葉大学 真菌医学研究センター 未来粘膜ワクチン研究開発シナジー拠点マクロファージの蓄積を特徴とする組織球症では様々な臓器が障害される。しかし、蓄積したマクロファージが組織障害を誘導する機序は未だ不明である。SLC29A3 異常症は、リソソームに局在するヌクレオシド輸送体である SLC29A3 の機能喪失型変異を原因として起こる家族性組織球症の一つである。我々は、SLC29A3 異常症においてグアノシン認識センサーである TLR7 が活性化することでマクロファージの増殖や蓄積が起こることを以前に報告してきたが、組織障害が引き起こされる理由は不明であった。本研究では SLC29A3 欠損マウスを用い、TLR7 活性化に伴う新規の病態発症機序の解明を目指した。組織球症モデルである SLC29A3 欠損マウスでは、血小板減少症や肝炎に加えて、3ヶ月齢までに全ての個体において顎下腺炎に伴うドライマウスが認められる。これらの病態はTLR7 欠損により完全に抑制された。SLC29A3 欠損マウスでは、顎下腺マクロファージのTLR7 が活性化した結果、腺房細胞の著明な脱落と T/B細胞の浸潤が認められた。また、特定のリンパ球を欠損させた結果、細胞傷害性 T細胞(CTL)が主要なエフェクター細胞であることが判明した。興味深いことに、顎下腺マクロファージの TLR7 活性化は炎症性サイトカイン産生をほとんど伴わず、MHCクラス I分子や CD80などのクロスプレゼンテーションに関わる分子群の選択的な発現上昇を誘導しており、さらには顎下腺における免疫寛容の維持に重要な常在性 NK細胞集団を著減させた。以上の結果より、過剰なリソソーム内ヌクレオシドストレスが誘導する非炎症性の TLR7ストレス応答は、抗原提示能の亢進と抑制性 NK細胞の減少を介して CTL依存的な組織障害を引き起こすことが判明した。本研究は発症機序が不明の顎下腺炎において TLR7 が原因となり得ることを初めて示したものであり、TLR7ストレス応答はヒト疾患において新たな治療標的となる可能性がある。〇柴田 琢磨 1 西村 栄美 1 三宅 健介 2 TLR7 ストレス応答が誘導する病態発症メカニズムの解明32P 002
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