第44回 阿蘇シンポジウム抄録集 2024
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森 康子神戸大学 大学院医学研究科 附属感染症センター 臨床ウイルス学分野3ヒトヘルペスウイルス6B(human herpesvirus 6B:HHV-6B)は、ヒトヘルペスウイルスに属し、初感染後宿主(ヒト)の体内に潜伏感染する。HHV-6Bは、活性化したT細胞に感染し、増殖することによって子孫ウイルスを産生する。本ウイルスは、乳幼児期の突発性発疹の原因ウイルスであり、ほぼ100%の成人がこのウイルスに感染していると考えられる。初感染時の突発性発疹は、時折重篤な脳炎を引き起こすこともあり、問題視されている。薬剤性過敏症症候群におけるHHV-6Bの再活性化も知られている。また、造血幹細胞移植後のHHV-6B再活性化による脳炎は致死的である。近年、我々は、HHV-6B特異的に働く宿主受容体が、活性化したヒトT細胞に発現しているCD134であることを見出した。HHV-6Bは活性化したT細胞に感染しウイルス増殖を行うことから非常に辻褄があった。さらに、そのウイルス側リガンドが糖タンパク質複合体gH/gL/gQ1/gQ2(テトラマー)であることを明らかにした。テトラマーを構成するgQ1あるいはgHに対する抗体は中和活性を有したことより、テトラマーのHHV-6Bに対するワクチン抗原としての可能性が示された。造血幹細胞移植後や薬剤過敏性症候群の早期において受容体であるCD134の発現がT細胞において認められ、受容体発現のウイルス再活性化・増殖への関与が示された。宿主受容体およびウイルス側リガンドの発見が、後にHHV-6B病態解明や制御法の開発に繋がった。2. ヒトヘルペスウイルス6Bと宿主受容体

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