菊繁 吉謙九州大学病院 遺伝子細胞療法部 講師1) Kikushige, Y. Shima, T. Takayanagi, S. et al.: Cell Stem Cell, 7:(6), 708-717, 2010. 2) Kikushige, Y. Miyamoto, T. Yuda, J. et al.: Cell Stem Cell, 17:(3), 341-352, 2015.3) Sakoda, T. Kikushige, Y. Miyamoto, T. et al.: Blood Adv, 7:(10), 2053-2065, 2023.4) Kikushige, Y. Miyamoto, T. Kochi, Y. et al.: Blood Adv, 7:(14), 3592-3603, 2023.5) Irifune, H. Kochi, Y. Miyamoto, T. Sakoda, T. Kato, K. Kunisaki, Y. Akashi, K. & Kikushige, Y.: Cancer Sci, 114, 3247-3258, 2023.15急性骨髄性白血病(AML)においては、少数の自己複製能を有する白血病幹細胞(LSC)とよばれる少数の幹細胞様のAML細胞により維持されている。すなわち、AMLは正常の造血幹細胞(HSC)と類似したLSCを頂点とする階層構造を形成しており、LSCは腫瘍の本体とも言える細胞であり、治療抵抗性およびAML再発にも深く関わることから、AMLの治療成績向上のためにはLSCを標的とした治療戦略の構築が望まれる。我々は、LSCとHSCの差異を基本としたLSC特異的治療戦略の構築に取り組んできた1)-3)。その過程でAML細胞における特異的な代謝特性について、臨床検体を用いたメタボロームデータベースの構築を行った4)。近年、LSCとHSCの代謝特性の差がいくつか明らかとなってきている。中でも臨床的に重要な代謝特性の違いとして、正常HSCがATP産生経路として、嫌気的解糖系に依存しているのとは対照的に、LSCはATP産生をミトコンドリアにおける酸化的リン酸化に強く依存していることが挙げられる。しかし、その一方で治療抵抗性LSCにおいては、正常HSCと同様にエネルギー産生を嫌気的解糖系にスイッチする可塑性を有していることも近年の研究で明らかとなってきた。そこで我々は、治療抵抗性白血病幹細胞が依存する代謝特性を明らかにするべく、構築したデータベースを用いた解析を行った。その結果、治療抵抗性AML細胞において、リボソーム生合成”Ribosome biogenesis”と関連する代謝経路が活性化し、種々の重要な遺伝子発現ネットワークを制御することで幹細胞性維持に重要な役割を担っていることを見出した。そこで本シンポジウムでは、ribosome biogenesisのヒトAML・LSCにおける機能解析および、これを標的とした新規治療戦略の構築について発表を行いたい。8. Ribosome biogenesisを標的とした白血病幹細胞に対する新規治療戦略
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