第43回 阿蘇シンポジウム抄録集 2023
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1) 長畑洋佑, 増田喬子, 河本宏:血液細胞の起源とミエロイド細胞. 臨床血液, 62:(5), 512-520, 2021.2) Nagahata et al.: Tracing the evolutionary history of blood cells to the unicellular ancestor of animals. Blood, 140:(24), 2611-2625, 2022. 長畑 洋佑京都大学 医生物学研究所 再生免疫学分野2. 血液細胞の進化の足跡を単細胞生物にまで遡るヒトの血液には、赤血球や血小板、リンパ球、貪食細胞などの様々な系列の細胞が存在しており、この様々な系列の血液細胞は貪食細胞を起源として出現したと考えられている1)。しかし、これは、多くの動物が貪食細胞を有していることからの推測であり、遺伝学的な証拠は乏しい状況であった。そこで、今回、いろいろな生物種の様々な細胞の遺伝子発現を比較し、血液細胞の進化の足跡を辿ることとした2)。本研究では、マウス、ホヤ、カイメン、カプサスポラ(真核単細胞生物)を研究対象とした。まず、これら4種の遺伝子を比較したところ、3237個の相同遺伝子が同定された。これら3237個の遺伝子発現プロファイルを各生物種・各細胞系列で比較したところ、マウス、ホヤ、カイメンの貪食細胞は互いに類似しており、さらにカプサスポラとの類似性も示された。マウスの貪食細胞とカプサスポラとの類似性を規定している遺伝子を探るため、両者に高発現している遺伝子を調べると、転写因子では唯一CEBPαが同定された。CEBPαはマウスの貪食細胞の分化に必要な転写因子として知られている。また、ホヤやカイメンにおいても、貪食細胞がCEBPαを高発現していることを確認した。さらに、カプサスポラ、カイメン、ホヤのCEBPαを、マウスの非貪食細胞系列の前駆細胞に発現させると、貪食細胞へと系列転換した。このことから、貪食細胞を規定するというCEBPαの機能が単細胞生物からマウスまで保存されてきたことが示された。以上より、貪食細胞が血液細胞の起源であることが明らかとなっただけでなく、その誕生の過程も明らかとなった。すなわち、動物の祖先が多細胞生物となった際に、CEBPαを発現することにより単細胞生物時代の形質を濃く引き継いだ細胞が体腔中に現れ、それが血液細胞の起源となったと考えられる。現在は、ホヤの血液細胞を詳細に調べることにより、マウスの多様な非貪食細胞系列がマクロファージからどのように進化してきたかの過程を解き明かすことに挑んでいる。3

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