第43回 阿蘇シンポジウム抄録集 2023
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1) Schatz, D. G. et al.: The V(D)J recombination activating gene, Rag1. Cell, 59:(6), 1035-1048, 1989.2) Hidaka, R., Miyazaki, K., Miyazaki M.: The E-Id axis instructs adaptive versus innate lineage cell fate choice and instructs regulatory T cell differentiation. Frontiers in Immunology, 13, 890056, 2022.3) Miyazaki, M. et al.: The opposing roles of the transcription factor E2A and its antagonist Id3 that orchestrate and enforce the naïve fate of T cells. Nature Immunology, 12:(10), 992-1001, 2011.4) Miyazaki, M. et al.: The E-Id Protein Axis Specifies the Innate and Adaptive Lymphoid Branches of the Immune System. Immunity, 46:(15), 818-834, 2017.5) Miyazaki, K. et al.: The transcription factor E2A activates multiple enhancers that drive Rag expression in developing T and B cells. Science Immunology, 5:(51), eabb1455, 2020.宮崎 正輝京都大学 医生物学研究所 再生免疫学分野1. 獲得免疫の多様性を牽引する力 〜エンハンサーと免疫進化について〜免疫機構はウイルスや細菌などの病原体から体を守る生体防御機構であり、自然免疫と獲得免疫が協調的に働き炎症反応を起こすことで病原体を排除します。自然免疫は、病原体の構造パターンを認識することで炎症を起こし、幅広い種類に対して対応できる反面、その特異性は低い。一方、獲得免疫は、T/B細胞の特異的な受容体(T細胞受容体と抗体)で多様な抗原を認識し抗原特異的な炎症反応を起こします。mRNAレベルでのスプライシングによる違いは多くのタンパク質で認められますが、この抗体とT細胞受容体の多様性はV(D)J遺伝子の再構成によって作られ、この遺伝子組換え機構はT/B細胞に特有の機能であり、獲得免疫による多様性認識の根幹と言えます。この遺伝子再構成を行う分子がRAG1/RAG2 (Recombination Activating Gene)分子であり、分化段階のT、 B細胞でのみ発現しその他の細胞では発現しません1)。言い換えると、Rag1/2遺伝子発現がT/B細胞への系列決定を意味し、この発現メカニズムが【獲得免疫の始まり】と言えます。またRag1/2遺伝子は有顎脊椎動物でのみ存在し、ヤツメウナギなどの無顎脊椎動物やその他の動物では認められないことから、進化的な意味も持つと考えられます。しかしながら、T/B細胞分化におけるRag1/2遺伝子の発現制御機構は未解明であり、さらにその制御は動物の進化とどう関連して来たのか全く不明でした。我々は長年、T/B細胞分化における転写因子の機能解析に取り組んできました2)。その過程で、bHLH型転写因子E2AがB細胞だけでなくT細胞の分化系列決定におけるエンハンサーレパトア形成にも必須であることを発見しました3), 4)。これらのことからE2AがRag1/2遺伝子のエンハンサーを制御することを考え、Rag1/2エンハンサー領域の同定を試みました。興味深いことにT、B細胞それぞれに固有のRag1/2エンハンサー領域を持つことを発見し、なぜT/B細胞だけRag遺伝子を発現しその他の細胞は発現しないのか? その制御機構を解明し、【獲得免疫の始まり】の重要な手がかりを得ることができました5)。今回のシンポジウムでは、Rag1/2の発現制御とエンハンサーの解析結果から、Gene Regulation研究の面白さ、エンハンサーと進化、そして転写因子の関連性について皆さんと好奇心を共有できたらと思います。1

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