1) Tsukamoto, H. et al, Proc. Natl. Acad. Sci. U S A., 119, e2205378119, 2022.2) Miura, Y. et al.: Microbiol Immunol., doi: 10.1111/1348-0421.13067. 2023.3) 塚本博丈: 臨床免疫・アレルギー科, 80, 4, 2023.塚本 博丈京都大学 がん免疫総合研究センター がん免疫治療臨床免疫学部門9. 老齢マウスモデルの知見から、がん免疫療法に伴うirAE病態の理解を目指してがん免疫療法が効果的、かつ安全な治療法として発展・確立する上で、治療により生じる免疫関連有害事象(immune-related adverse events: irAE)のマネジメント戦略の開発は必要不可欠である。我々は、がん患者の7割以上が高齢であるということに着目し、若齢ではなく老齢マウスを用いてPD-(L)1阻害療法に伴う有害事象の検討を行なった。その結果、担がん老齢マウスではPD-(L)1阻害療法により、肺、肝臓、腎臓などの正常臓器においてT細胞、B細胞の異所性浸潤を伴う3次リンパ組織様構造(Tertiary lymphoid structure:TLS)の形成、抗体の沈着、および臓器傷害が誘導されることを見出した1)。さらにマウスでの発見を支持するように、TLSの形成に必須のケモカインCXCL13がirAE患者で高値を示すという結果を得ている1), 2)。現在、上記irAE実験モデルを活用し、ヒトでは困難なirAEの発生機序のin vivo解析を進めている。この解析の過程で、PD-(L)1阻害療法を受けた老齢マウスにおける肺傷害がCD4T細胞の除去により改善されるという結果を得たため、浸潤CD4T細胞の詳細な解析を行なった。その結果、若い担がんマウスでは見られない特徴的な形質のCD4T細胞が老齢担がんマウスにて誘導されることがわかり、irAE臓器における異所性の免疫応答、および臓器機能不全を引き起こす要因の一つとなっている可能性が示唆された。さらに、京都大学附属病院にてPD-(L)1阻害療法を受けたがん患者において、これら特徴的形質を持ったCD4T細胞の頻度がヒトirAE発症と相関することを見出した。これらの知見をもとにirAEマネジメントへの戦略について議論したい(挿入図3))。17
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