1) Saito, K. et al.: Allergy., in press. doi: 10.1111/all.15762.2) Akdis, C. A.: Nat Rev Immunol., 21:(11), 739-751, 2021.3) Morita, H. et al.: J Allergy Clin Immunol., 143:(6), 2190-2201, 2019.4) Morita, H. et al.: Immunity., 43:(1), 175-186, 2016.5) Takeuchi, K. et al.: J Allergy Clin Immunol., 151:(5), 1402-1409, 2023.森田 英明国立研究開発法人 国立成育医療研究センター研究所 免疫アレルギー・感染研究部6. 環境因子による上皮バリア破壊とアレルギー性炎症1970年代以降にアレルギー疾患の患者数が急増し、現在では国民の約半分が何かしらのアレルギー疾患を有するとされ、大きな社会的な問題となっている。アレルギー疾患は、遺伝的素因と環境要因が複雑に絡み合って発症する「多因子疾患」と考えられているが、遺伝的素因が短期間で変化するとは考えにくいため、この短期間に患者数が急激に増加した原因は主に環境の変化にあると考えられる。アレルギー疾患が増加した原因として、最も有名な仮説として知られるのが「衛生仮説」である。様々な疫学調査に基づき、近代化と共に衛生的な環境になるにつれ、幼少期に微生物(細菌やウイルス)へ曝露される機会が減ったことがアレルギーの増加の要因であるとした説で、現在では広く受け入れられている。一方で近年、人間の体が外界と接する部分に存在する細胞(上皮細胞)のバリア機能が、外的/内的要因を含む何かしらの要因で障害されることがアレルギー疾患の発症につながるという「上皮バリア仮説」が提唱された。本講演では、環境因子とそれらに曝露される上皮細胞に着目し、アレルギー性炎症の惹起機構について紹介する。また、従来「多因子疾患」と考えられてきたアレルギー疾患の中にも、一部の重症例においては、単一遺伝子の異常に起因してアレルギー疾患を発症する「単一遺伝子疾患」である可能性が示唆されている。アレルギー疾患の原因となり得る遺伝子異常についても最新の知見を紹介する。11
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