1) Kabashima et al.: Nat Rev Immunol, 19:(1), 19-30, 2019.2) Nakamizo et al.: J Exp Med, 218:(9), e20202345, 2021.中溝 聡京都大学 大学院医学研究科 先端医療基盤共同研究講座4. 炎症性皮膚疾患における抗原提示細胞のsingle cell RNA sequencingによる解析皮膚は、私たちの身体と外界を隔てる最大の器官であり、常に抗原や病原体にさらされている。そのため、皮膚には様々な免疫細胞が存在し、互いに作用し合って、外来抗原に反応して皮膚炎を誘発する1)。ウイルス感染、接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、乾癬などの炎症反応は、1型、2型、17型などの異なるタイプのヘルパーT細胞によって誘発される。抗原提示細胞(APC)は、自然免疫と適応免疫を結びつけ、T細胞を介した皮膚炎反応を促進する上で重要な役割を担っている。しかし、ヒトの皮膚に存在するAPCの集団は十分に解明されておらず、これらの疾患への寄与も不明なままである。この問題を解決するために、我々は炎症性皮膚疾患のsingle cell RNA sequencingを行い、いくつかの新規APC分画を含むAPCのすべての分画を特定した2)。その結果、アトピー性皮膚炎と乾癬では、活性化した樹状細胞(DC)(LAMP3+)が増加し、T細胞の生存と増殖を促進するサイトカインであるIL-15を産生していた。さらに、乾癬ではDC3(CD1c+、CD14+)の増加が認められ、乾癬発症に必須なサイトカインであるIL-1BとIL-23Aを産生していた。さらに、皮膚肉芽腫性疾患であるサルコイドーシスにおいて、TREM2陽性マクロファージが増加していた。TREM2はマクロファージや樹状細胞の表面に発現する受容体で、貪食やサイトカイン産生を促進するなど、自然免疫反応に重要な役割を担っている。本研究は、炎症性皮膚疾患におけるAPCの不均一性を証明し、疾患発症におけるその重要性を示すものである。また、single cell RNA sequencingを用いることで、APCを詳細に分類することができ、これらの疾患の治療のための潜在的な治療標的を特定するのに役立つと考えられる。7
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