第42回 阿蘇シンポジウム抄録集 2022
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岡田 賢広島大学 大学院医系科学研究科 小児科学1) Bastard, P. et al.: Science, 370:(6515), eabd 4585, 2020.2) Zhang, Q. et al.: Science, 370:(6515), eabd 4570, 2020.3) Asano, T. et al.: Sci Immunol, 6:(62), eabl 4348, 2021.4) Casanova, JL. et al.: Cell, 181:(6), 1194-1199, 2020.2. COVID-19重症化と宿主免疫近年、特定の病原体に対して『選択的』に易感染性を示す原発性免疫不全症(PID)の存在が明らかになりつつある。ウイルスに対する宿主免疫には、I型インターフェロン(I型IFN:IFN-α/βなどが該当)が重要な役割をはたす。実際、I型IFNのシグナル伝達が障害されたPID患者は、ウイルスに対する易感染性を示す。特に典型例では、麻疹・風疹・水痘・黄熱などの生ワクチンによる全身性の感染症を示し、致死的経過をたどる重症例も存在する。2020年にアウトブレイクし、国際的な脅威である新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化にもI型IFNが関与する。我々は、CHGE(COVID Human Genetic Effort)を介した国際共同研究で、COVID-19重症化に関連する宿主因子の解明に取り組んでいる。なかでも高齢、基礎疾患といったリスク因子を持たないにも関わらず重症化したCOVID-19患者に注目して解析を行っている。CHGEの代表的な成果として、1)COVID-19重症例の10.2%が抗I型IFNに対する自己抗体を保有すること1)、2)COVID-19重症例の3.4%が、I型IFNの産生・作用に関連する13遺伝子に有害変異を保有すること2)、3)60歳未満のCOVID-19重症男性患者の約1.8%がTLR7異常を有すること3)、などを明らかにしてきた。X染色体に存在するTLR7遺伝子の障害がリスク因子になること、男性・高齢者において抗I型IFN抗体の頻度が高いことは、性別(男性)がCOVID-19の重症化リスク因子となる原因の一端を担うと考えている。本シンポジウムでは、CHGEを基盤とした国際共同研究で得られた知見を中心に、COVID-19重症化と宿主免疫との関連性について紹介する。3

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