大賀 正一九州大学 大学院医学研究院 成長発達医学1) Inoue, H. et al.: Neurodevelopmental Outcomes in Infants With Birth Weight ≤500 g at 3 Years 2) Nanishi, E. et al.: A Nationwide Survey of Pediatric-onset Japanese encephalitis in Japan. Clin 3) Tanita, K. et al.: Rotavirus Vaccination and Severe Combined Immunodeficiency in Japan. Front 4) Sonoda, M., Ishimura, M., and Eguchi, K. et al.: Progressive B cell Depletion in Human MALT1 5) Egami, N. et al.: Clinical Impact of Heritable Thrombophilia on Neonatal-onset of Age. Pediatrics, 142:(6), e20174286, 2018.Infect Dis, 68:(12), 2099-2104, 2019.Immunol, 13, 786375, 2022.Deficiency. Clin Exp Immunol, 206(3): 237-247, 2021.Thromboembolism: A nationwide study in Japan. J Pediatr, 238: 259-267, 2021.11. ゲノム医療の実装と治療への展開 2:新生児/小児わが国の早期産児の救命率は世界で最も高く、さらなる予後向上が試みられている1)。COVID-19が拡大した2年間に出生率の低下は加速し、小児領域ではvaccine-preventable diseases(VPD)と新生児・乳児健診の重要性が再認識されている2)。同時にこの2年間に予防と先制医療をめざすゲノム診療が新生児・小児領域にも実装され、単一遺伝子病に対する発症前酵素補充療法と造血細胞移植、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)療法などの免疫細胞療法、そして遺伝子治療の成果を実感するようになった。若年者ほど未発症単一遺伝子病が存在するリスクが高く、先天異常症、先天性代謝異常症(IEM)、原発性免疫不全症(IEI)、遺伝性造血障害(IBMFSなど)、遺伝性神経疾患、先天性腎尿路奇形(CAKUT)、家族性腫瘍、早老症など生殖細胞系列のゲノム異常に起因する様々な疾患がある。院内出生がすでに99%をこえている日本では、明らかな異常を指摘されない“健常新生児(ostensibly healthy infants)”が自宅に戻ったあと、生後2か月から始まる小児科での予防接種までに、どのような健診プログラムを開始するのが望ましいのか、その体制確立がこれからの重要な課題である3)。新生児スクリーニング(NBS)はタンデムマスの導入により古典的な6疾患から20疾患に拡大され10年以上が経過した。現在、ライソゾーム病、重症複合免疫不全症(SCID)、乳児型脊髄性筋萎縮症(SMA)などの根治を目指したactionable NBSが世界的にも拡大している。効率的なゲノム診断を最速化して予防と治療管理を開始したい。新生児から根治を目指すprecision medicineとして、私たちが行っているIEIに対する造血細胞移植4)、Pompe病などIEMの酵素補充療法、遺伝性止血血栓異常に関する臨床研究5)についての現状とこれからを概説する。21
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