小川 誠司京都大学 大学院医学研究科 腫瘍生物学講座 1) Yoshida, K., Sanada., M., and Shiraishi, Y. et al.: Frequent pathway mutations of splicing machinery in myelodysplasia. Nature, 478:(7367), 64-69, 2011. 2) Polprasert, C., Schulze, I., and Sekeres, MA. et al.: Inherited and Somatic Defects in DDX41 in Myeloid Neoplasms. Cancer Cell, 27:(5), 658-670, 2015. 3) Ogawa, S.: Genetics of MDS. Blood, 133:(10), 1049-1059, 2019.4) Bernard, E., Tuechler, H., and Greenberg, PL. et al.: The Molecular International Prognostic Scoring System (IPSS-M) for risk stratification in myelodysplastic syndromes. NEJM Evidence. in press. 2022.https://evidence.nejm.org/doi/pdf/10.1056/EVIDoa22000085) Kakiuchi, N., Ogawa, S.: Clonal expansion in non-cancer tissues. Nat Rev Cancer, 21:(4), 239-256, 2021.8. 白血病の遺伝的素因に関する近年の知見について白血病の遺伝的素因、とくに成人における遺伝性素因に関しては、その頻度や責任遺伝子など、従来不明な点が多かったが、近年のゲノム解析技術、とくにゲノムシーケンス技術の革新を背景として、その知見に関して大きな進展が認められている。すなわち、白血病についても他の多くの固形腫瘍と同様に、遺伝的背景が大きく関与していることが明らかにされつつあり、これらが特徴的な発症様式、病態、予後をしめすことから、WHO分類においても「myeloid neoplasms with germline predisposition」として新たに分類されている。我々は2015年に遅発性の骨髄系腫瘍の発症に関わる胚細胞変異の標的として新たにDDX41遺伝子を同定した(Proplasart et al., Cancer Cell, 2015)。以来、本遺伝子の胚細胞変異および体細胞性変異について、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、その他の骨髄系腫瘍における頻度、病態、予後に関する報告がなされてきたが、多くは30例以下の少数の報告にとどまりその全貌、とくに、胚細胞性変異を有するキャリアーにおける骨髄性腫瘍発症に関する浸透率、集団における変異アレル頻度、変異特異的な病態については多くが不明である。我々は国際共同研究を通じて9,000例を超える骨髄性腫瘍のコホートで認められた300例を超えるDDX41陽性の骨髄系腫瘍の患者について、変異の分布、疾患別の頻度、浸透率、共存変異の特徴に関する解析を行った。DDX41の胚細胞性変異を有する症例は、骨髄系腫瘍全体の約3-4%を占め、特に高リスクMDSおよび二次性白血病においては8-10%の症例に同遺伝子の胚細胞変異を認める。骨髄系腫瘍の発症に関するオッズ比は約10倍で、変異のキャリアーにおける白血病の発症は50歳以前では殆ど無視できるものの、60歳をこえる年齢から急速に上昇し、90歳までに約半数の症例が骨髄性腫瘍を発症する。本講演では、我々が作成したDDX41変異マウスモデルの解析結果も含め、DDX41変異に関する近年の知見について紹介する。15
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