中山 俊憲千葉大学1) Nakayama, T. et al.: Th2 cells in health and disease. Annu. Rev. Immunol, 35, 53-84, 2017. 2) Morimoto, Y. et al.: Amphiregulin-producing pathogenic memory T helper-2 cells instruct eosinophils to secrete osteopontin and facilitate airway fibrosis. Immunity, 49:(1), 134-150, 2018.3) Ichikawa, T. et al.: CD103hi Treg cells constrain lung fibrosis induced by CD103lo tissue-resident pathogenic CD4 T cells. Nat. Immunol., 20:(11), 1469-1480, 2019.7. 病原性免疫記憶と慢性難治性炎症の成立:病原性Th2細胞「免疫記憶:Immunological Memory」は脊椎動物だけが持つ獲得免疫系(適応免疫系)の象徴的な現象で、リンパ球が主役を果たす。インフルエンザやCOVID-19をはじめとする感染症の予防接種は、免疫記憶の現象を利用した医療として役立っている。逆に、アレルギーや自己免疫疾患、種々の慢性炎症疾患の発症や病態の遷延化に関与する有害な病原性(pathogenic)の免疫記憶細胞も存在する。有用な免疫記憶を増強させ、有害な免疫記憶(アレルゲン特異的記憶Th2細胞など)を抑制するといった免疫記憶の制御法は未だ解明されていない。今回は、種々の慢性アレルギー性炎症疾患の発症や病態の遷延化に関与する有害な記憶型病原性Th2細胞(Pathogenic Th2 cell:Tpath2 cell)をご紹介する。私たちが提唱している「Pathogenic Th population disease induction model」では、Th1病やTh2病はTh1/Th2のバランスの崩れによって起こるのではなく、pathogenicなTh1/Th2/Th17細胞分画が、特に記憶細胞になる段階で(環境の影響を受けて)形成され、この“記憶型病原性Th細胞”が炎症疾患を起こすと考える1)。特に、繊維化を誘導する病原性Th2細胞の解析2)、アスペルギルス(真菌)による肺線維化における組織常在性記憶病原性T細胞と制御性T細胞の役割に関する知見3)に加えて、最近の知見をご紹介したい。慢性炎症疾患の病態を「記憶型病原性Th細胞の形成・浸潤・維持・再活性化」の結果と捉え、この記憶型病原性Th細胞を制御することで難治性の慢性アレルギー性炎症疾患をコントロールするという新たな治療戦略のコンセプトをご紹介したい。13
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