澤 新一郎九州大学 生体防御医学研究所 粘膜防御学分野1) Nagashima, K., Sawa, S. et al.: Identification of subepithelial mesenchymal cells that induce IgA and diversify gut microbiota. Nat Immunol, 18:(6), 675-682, 2017.2) Sawa, S., Lochner, M. et al.: RORγt+ innate lymphoid cells regulate intestinal homeostasis by integratingnegative signals from the symbiotic microbiota. Nat Immunol, 12:(4), 320-326, 2011. 3) Sawa, S., Cherrier, M. et al.: Lineage relationship analysis of RORγt+ Innate Lymphoid Cells. Science, 330:(6004), 665-669, 2010.6. 粘膜免疫研究の最前線外部環境との界面領域に位置する腸管には強固な免疫監視網が張り巡らされ、病原性微生物から生体を防御する精緻な仕組みが構築されています1)。マウスやヒトの腸管にはT細胞やB細胞のほかに、抗原受容体を持たない3型自然リンパ球(ILC3) が数多く存在します2)-3)。ILC3は腸管内に孤立リンパ濾胞と呼ばれるリンパ組織を形成し、管腔側に存在する腸内細菌に対する抗体産生の場を提供します。また、ILC3は上皮バリアの維持に重要なサイトカインを産生し、病原性微生物の上皮下への侵入を防ぐことがこれまでの多くの研究で明らかになっています。転写因子RORγtはILC3やTh17細胞の分化およびエフェクター機能の獲得に重要なマスター制御因子です。ごく最近、私たちはRorc遺伝子のイントロン内にILC3分化への関与が報告された複数の転写因子結合配列が集簇する領域を見つけました。本領域はヒトを含む哺乳類全般で高度に保存されており、欠失によりILC3におけるRORγtタンパク質発現が著しく低下したことから、ILC3特異的なエンハンサーと考えられます。現在、我々はILC3が特異的に減少した腸管で生じる様々な現象について、そのメカニズムを解き明かす研究を進めています。本講演ではILC3を中心に、我々の研究室で進行している研究を紹介します。 11
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