第42回 阿蘇シンポジウム抄録集 2022
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三宅 健介東京大学 医科学研究所 感染遺伝学分野1) Chan, M, P. et al.: DNase II-dependent DNA digestion is required for DNA sensing by TLR9. Nat Commun, 6: 5853, 2015.2) Liu, K. et al.: Skewed endosomal RNA responses from TLR7 to TLR3 in RNase T2-deficient macrophages. Int Immunol, 33:(9), 479-490, 2021.3) Murakami, Y. et al.: Anti-TLR7 Antibody Protects Against Lupus Nephritis in NZBWF1 Mice by Targeting B Cells and Patrolling Monocytes. Front Immunol, 12: 777197, 2021.5. リソソーム核酸ストレスに対するマクロファージ応答によって誘導される疾患リソソームは細胞外あるいは細胞内の代謝産物を分解する場として理解されてきた。しかしながら近年、リソソームが、代謝の状態を監視し、恒常性維持のための細胞応答を誘導する場として機能することが明らかになりつつある。例えば、リソソームは核酸を分解するばかりでなく、認識する場でもあり、核酸分解と認識は深く関係している。核酸特異的Toll様受容体(Toll-like receptor, TLR)はリソソームに局在し、病原体由来の核酸に応答して感染防御反応を誘導する。TLR3、TLR7、TLR8、TLR9がそれぞれ、2本鎖RNA、1本鎖RNA、1本鎖RNA, 1本鎖RNAに応答する。構造生物学的および機能的な解析から、リソソームにおける核酸分解は、核酸特異的TLR応答を正にも負にも制御することが分かってきた。TLR9が認識する1本鎖DNAの産生には、リソソームで機能するDNase、DNase IIによるDNAの分解を必要とする1)。一方、リソソームで機能するRNaseであるRNaseT2は、TLR3のリガンドである2本鎖RNAを分解し、TLR3応答を抑制する2)。TLR7、TLR8は核酸分解産物であるヌクレオシドとオリゴリブヌクレオチドに応答し、その応答はRNaseT2によるRNA分解に依存する。したがって、マクロファージや樹状細胞における核酸代謝の異常は、TLR応答の恒常的な活性化や機能低下を誘導し、様々な疾患の原因となる。例えば、ヒトでDNase I like 3の機能低下型遺伝子変異は、全身性エリテマトーデス様の病態を誘導するが、その病態にはTLR9、TLR7の恒常的活性化が関与する。さらに、全身性エリテマトーデスのモデルマウスであるNZBWF1でも、マクロファージにおけるTLR7活性化が糸球体腎炎の病態に関わることから3)、リソソームにRNAが蓄積している可能性が有る。本口演ではリソソームにおける核酸の蓄積、すなわち核酸ストレスが核酸特異的TLRを活性化することによって誘導する疾患についての我々の最近の知見を紹介する。9

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