第41回 阿蘇シンポジウム抄録集 2021
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中嶋 建介長崎大学 感染症共同研究拠点 施設・安全管理部門長崎大学では本邦初となるスーツ型(陽圧防護服型)BSL-4施設の建設を、今夏の竣工を目指して進めている。講演ではその施設の概要を中心に、施設設置に向けたこれまでの経緯と対応、施設設計のために実施した調査、それに基づいて策定した設計方針、そして地域の理解促進に向けた取り組み等について紹介する。現在、世界には既に約20か国に50か所以上のBSL-4施設が設置されている。近年、アジア地域でも設置が進み、中国では武漢での施設設置に続き北京、昆明等の4か所での施設設置を計画し、韓国ではソウル近郊の五松に1施設を有し、台湾では台北近郊等に2施設を有し、シンガポールでも1施設を有する状況である。ちなみにBSL-4施設にはグローブボックス型とスーツ(陽圧防護服)型の2タイプがあるが、現在稼働する若しくは新たに建設される施設のほとんどがスーツ型となっている。また米国NIHでは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン開発にかかわる動物実験をBSL-4施設で行うなど、病原体と実験内容に応じたBSL-4施設の利用が進む。そのような世界の状況に対し、我が国では1980年代前半に国立予防衛生研究所(現国立感染症研究所)と理化学研究所でそれぞれBSL-4施設(グローブボックス型)が設置されたが、地元住民等の反対により実際の利用が進まなかった。その後、西アフリカでのエボラ出血熱の流行を踏まえ、2015年に国立感染症研究所のBSL-4施設が感染症法に基づき大臣指定され、2019年に病原体が輸入され実稼働が始まったが、実験室の利用目的は患者検査等に限定されている状況である。今回、国・県市をはじめ、各方面の協力を得て、長崎大学にBSL-4施設が設置されることとなり、ようやく我が国でも研究目的でのBSL-4施設の利用がかなう状況となってきた。今夏の施設竣工後は、今年度中に実験機器を搬入し、来年度から本格的に施設設備の慣熟運転、職員に対する習熟訓練を行い、応分の時間をかけて一つ一つ、対応を進めていく予定である。将来の新たな感染症の脅威に対しも、この施設が研究面で対策に貢献できるよう努めていきたい。2513. 本邦初となる長崎大学のスーツ型BSL-4施設について

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