第41回 阿蘇シンポジウム抄録集 2021
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押海 裕之熊本大学 大学院生命科学研究部 免疫学講座1)Miyashita,Y.etal.:PLoSOne,14:(7),e0219510,2019.2)Okamoto,M.etal.:JBC.,293:(48),18585-18600,2018.3)Nakashima,M.etal.:ScientificReports,11,9369,2021.4)Tsukamoto,H.etal.:iScience,23:(9),101520,2020.ワクチンは感染症予防の要であるが、副反応への不安は接種率を低下させる大きな要因である。しかし、副反応についての研究は十分には進められていない。副反応問題の根幹は免疫応答の個人差の問題であり、一部の人に強い免疫応答が生じることが漠然とした不安へと繋がっている。免疫応答の個人差には遺伝的要因とそれ以外の要因として腸内細菌叢や代謝異常などが知られているが、我々は血液中に豊富に存在する細胞外小胞内のmicroRNAに着目した(図1)。健康人の血液中の細胞外小胞内microRNAを網羅的に調べたところ、miR-451aなどの免疫制御性のmicroRNAの濃度が高いことや、miR-451aの発現量が数ヶ月かけて緩やかに変動するなど個人差があることなどを発見した1),2)。また、マウス動物実験から血中の細胞外小胞内のmiR-451a濃度は脾臓のT細胞や樹状細胞内のmiR-451a量と強く相関することが明らかとなった3)。 そこで、2018/2019年のインフルエンザシーズンでのワクチン接種においてコホート研究を行い、血液の細胞外小胞内のmiR-451aの濃度とワクチン接種後の副反応の程度とについて調査したところ、miR-451aの濃度が低下していると、副反応の程度が強い傾向がみられた1)。我々は、現在接種が進められているCOVID-19に対するワクチンについてもコホート研究を実施している。これまでの研究から血液の細胞外小胞内microRNAはワクチン接種後の免疫応答と連動するバイオマーカーとなることが示唆されたが、一方で、microRNAそのものが免疫応答にも強い影響を与える。老化したマウスでは血中細胞外小胞内miR-192の発現量が上昇し、このmiR-192を含む細胞外小胞を投与することで老化したマウス個体のワクチン予防効果を改善した4)。これらの結果は、細胞外小胞がワクチンの副反応や予防効果を制御する上で重要な因子の一つであることを示唆する。179. 細胞外小胞内microRNAとワクチン接種後の免疫応答

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