第40回 阿蘇シンポジウム抄録集 2019
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■■■■■山口大学 大学院医学系研究科 免疫学講座1. 最新がん免疫療法のその先へ:CAR-T細胞療法の未来像免疫チェックポイント阻害剤に続く新しいがん免疫療法の一つとして、遺伝子改変T細胞を利用した治療技術の開発が世界的に進展している。腫瘍特異性を付与するための手法として、腫瘍特異的なT細胞受容体やキメラ抗原受容体(Chimeric Antigen Receptor: CAR)が利用されており、特にCAR-T細胞療法はB細胞性急性リンパ性白血病を始めとする造血器腫瘍に対して極めて優れた治療効果を発揮することが示され、米国では2017年、欧州では2018年、そして我が国においては2019年2月に血液がんを対象としてCD19 CAR-T細胞が承認された。一方で、現在のCAR-T細胞技術には克服すべき問題点も多く存在している。例えば、がん細胞に特異性の高い標的分子が必要であることやサイトカイン放出症候群の発症、寛解後に再発する症例の存在などである。また、CAR-T細胞療法は固形がんに対しては未だ十分な治療効果を示すことが出来ていない点も大きな課題である。我々はCAR構造にさまざまな技術改良を加えることで、これらの課題を克服する次世代型CAR-T細胞療法の開発に取り組んでいる。その一つとして、タグを標識した抗腫瘍抗体とタグを認識するCAR-T細胞の組み合わせにより、複数の標的分子を同時に認識できるCAR-T細胞システムを開発した1)。さらに、T細胞の増殖や生存を高めるサイトカインであるIL-7とT細胞や樹状細胞の遊走を誘導するCCL19を同時に発現するCAR-T細胞を開発し、これらが固形がんマウスモデルにおいて優れた治療効果を示すことを見出した2)。本講演では我々の試みを紹介すると同時に、遺伝子改変技術を利用したがん免疫細胞療法の課題と将来像について概説する。1) Tamada, K., Geng, D., Sakoda, Y,. Bansal, N., Srivastava, R., Li, Z. and Davila, E. : Clin Cancer Res., ■■:(23), 6436-6445, 2012.2) Adachi, K., Kano, Y., Nagai, T., Okuyama, N., Sakoda, Y. and Tamada, K. : Nat Biotechnol., ■■:(4), 346-351, 2018.1

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