第40回 阿蘇シンポジウム抄録集 2019
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■■■■■国立がん研究センター中央病院 先端医療科4. がん免疫療法の開発状況と今後の展望近年、免疫チェックポイント阻害剤の開発が成功し、各種がんに適応の拡大が進んでいる。2011年3月に抗CTLA-4抗体が切除不能悪性黒色腫に対して同剤として米国FDAから世界初の承認を受けた。その後、抗PD−1抗体を中心に免疫チェックポイント阻害剤「単剤」で各種がんに対して適応の拡大が進み、単剤での開発には一定の目途が立ちつつあるなか、更なる治療成績の向上を目指して多数の併用療法(複合がん免疫療法)の臨床試験が進行中である。現在、新規がん免疫療法の臨床試験は併用療法も含めると早期試験を中心に全世界で2000種類以上行われているものと推計されており、免疫チェックポイント阻害剤に各種治療(免疫刺激(賦活)剤、抗がん剤、分子標的薬、代謝阻害剤、epigenetic修飾剤、放射線療法、遺伝子改変T細胞療法など)を組み合わせた併用療法の検証が行われている。免疫療法同士の併用療法として、本邦においても2018年に進行悪性黒色腫、腎細胞癌における初回治療として抗PD-1抗体と抗CTLA-4抗体の併用療法が承認された。2018年12月には非小細胞肺癌における初回治療として免疫チェックポイント阻害剤と標準化学療法との併用療法が承認された。その他、トリプルネガティブ乳癌に対して、免疫チェックポイント阻害剤とナブパクリタキセルの併用療法が国内承認申請中である。開発の戦略の一つとして、抗VEGF薬剤によって腫瘍微小環境における免疫抑制細胞の働きを抑えて抗腫瘍効果を高めることが検証されており、腎細胞癌における初回治療として標準分子標的薬(抗VEGF効果を含むmulti-kinase inhibitor)と免疫チェックポイント阻害剤との併用療法の有効性が示され国内承認申請中である。これまでの本剤の開発状況について総括し、個別化医療に向けた将来展望について概説したい。7

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